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Interview

パラクライマー平井亮太選手「目標は世界のメダリスト、そして誰かの1歩踏み出す希望になること」

今回のKA・RA・DA magは、サポートさせていただいているアスリートの中から、パラクライマーの平井亮太選手と、専属トレーナーであるカラダファクトリー整体師の山本千帆里さんのインタビューをお送りします。
クライミングとは、自らの手や足、道具を用いて壁面などをよじ登る競技。もともとは登山の一形態でしたが、近年ではスポーツクライミングが世界大会の競技となるなど注目されています。
パラスポーツであるパラクライミングは、身体機能障害、視覚障害など障害の程度に応じた細かいクラス分けがされています。もし片足がなかったら、片腕がなかったら、目が見えなかったら、体の動きに制限があってもチャレンジし続けているアスリートがいます。
平井亮太選手は、車椅子のクライマー。腕の力だけで壁面をよじ登っていきます。平井選手は27歳で持病を発症。苦難を乗り越え、クライミングを始め、2018年には初めてパラクライミングジャパンシリーズに参加し2位となり、2023パラクライミングジャパンシリーズ第1戦1位という結果を残されました。
FJG とは、2023年2月にアスリートサポート契約を締結。トレーニングスケジュールの合間を縫ってカラダファクトリーにご来店いただき、定期的にケアを受けていただいています。
また、サポートしているのはカラダファクトリー整体師歴10年の山本千帆里さん。
自身も学生時代は槍投げの選手で、社会人となってからも女子ラグビー競技をしてきた元アスリートです。平井選手との出会いで施術家としてもたくさんの気づきがあったと言います。

スイスで行われたパラクライミング世界選手権大会に出場

今年8月に、初となる海外遠征で、スイスで行われるパラクライミングの国際大会(IFSC パラクライミング世界選手権大会(L)ベルン(スイス)2023)に出場しました。
日本の大会出場では思ったより緊張はしなくて、壁の前に立つといつもどおり頑張ろうという気持ちになるのですが、やはり日の丸のユニフォームを着ると、違いますね。改めて国際大会なんだと実感しました。
そこでの結果は5位。自分としてはメダルを獲るつもりだったので、本当に悔しかったですね。
世界のライバルたちと並ぶと、すごいなとも思うのですが、同じ人間だから、届かない訳ないと思うんです。壁に向かって登ることは日本の大会と変わらないはず。
来年2024年の3月に、選考会がありその結果でワールドカップにいけるかどうかが決まるので、今はそれに向けて日々トレーニングをしているところです。

写真:2023パラクライミングジャパンシリーズ第1戦 ©ソー写ルグッド

難病”副腎白質ジストロフィー”を発症したのは27歳のころ。30歳で車椅子生活に。アスリートとして世界に!覚悟を決める。

神奈川県綾瀬市出身です。スポーツは4歳から小学校6年生まで水泳を、小学校4年生から中学・高校時代は野球と、スポーツ全般をやっていました。今の自分との違いは、どれも積極性に欠けていて1番になってやろうとは思ってやっていなかったことですかね(笑)。
それでも身体を動かすことが大好きで、自分にとっては欠かせないこと。
車椅子生活になってからも、すぐにパラで世界大会を目指すと覚悟を決めました。
持病である難病”副腎白質ジストロフィー”を発症したのは27歳のころ。最初は歩いていて躓くことが多くなり、そのうちに歩いていて脚が重く感じることが多くなり、3年くらいかけて進行していきました。30歳から車椅子生活をしています。
この病気の診断が出るまでには2年ほどかかりました。最初は治るものだと思っていたし、色んな病院や接骨院などあちこち通院して、それでも原因が分からない。そのうち松葉杖がないと歩けなくなりました。自分でもおかしいと思っていたので、実際に病名が診断されたときには少しスッキリしたというのも事実です。
病気になるまでは自動車整備士の仕事をしていましたが、徐々に進行するにつれて身体を動かすことが難しくなり、後半は事務の仕事をさせていただいたりしていました。
ネガティブになった時期もありましたが、そんなときも筋トレ(筋力トレーニング)は欠かさなかったし、身体が衰えることに対しては抵抗感がありました。トレーニングしている時や重いものを持っているときはつらい気持ちも忘れられる。運動は続けて行こうと思いました。
最初は、手で漕ぐ自転車競技の車椅子レースをしたり、色々チャレンジしてみました。何かやらなきゃという思いで、自分に合う競技を探していましたね。そんなとき出会ったのが現役のパラクライマーの選手。クライミングを始めてみたら、もう「これで一番になりたい!」と思いました。

クライミングの魅力は、戦う相手が自分だということ。病気に対しても負けてはいられない

パラクライミングは、シンプルに言うと、腕だけではなく、背中・胸もですが上半身すべてで壁を登っていく必要がある競技だということ。もともと自分は筋トレが好きですし、クライミングを通じて、自分自身の力で「次、進めるか」というタイミングで進んでみて限界を超えた時、自分に勝ったという気持ちになる。それがクセになります。
パラのクライミング競技では、障害の内容により様々な選手がいます。自分は脚が使えませんが、同じように戦っている選手たちもいます。でも本当に戦う相手は自分だということ。
トレーニングを通じて、「前回を超えるぞ」という気持ち。超えられたときには喜びがあり、強くなれている実感があります。ライバルばかりを見ていると成長が遅れてしまう。あくまで自分に負けないことが大切です。そう思うと、病気に対しても負けてはいられない。強いライバル選手もいますが、限界まで登って超えて行きたいですね。
クライミングの大会では、登る前に下でイメージしてから登り始めるのは大切です。内側に絞って胸を使って登るかとか、色々検討するのですが、一緒に戦うライバル選手同士も意外と仲間意識が強くて、登る前に一緒にどうやって登っていくか作戦会議をしたりとか、そういうところも魅力の一つですね。
大会に向けてのモチベーションは、「来年クライミング出来ていないかもしれない」「この大会で力を出し尽くそう」それくらいの気持ちで向かっています。甘えを出したくない。大会でどういう自分でいたいか。どういう姿でどういうことを伝えて行きたいか、それを考えます。傷口に塩を塗るようですが、あえてつらいことも思い出してそんなことに比べたら平気だろうと自分を追い込んでいきます。主治医の先生には、大会前はあまりトレーニングで追い込み過ぎないように、怪我するわけにはいかないのでとも言われているので、気を付けながらやっています。

オフの日は、飼い犬と海を見に行ったり、自然に触れて癒されることも。 カラダファクトリーには毎週定期的に通っています。

オフの日の過ごし方ですが、基本的には時間があったらすぐにトレーニングをしたいタイプ。他の選手がこの時間トレーニングをしているかもと思うと居ても立っても居られない。
でも、追い込み過ぎてもよくないこともありますし、たまにクライミング仲間と食事をしに行くことはありますね。
それから、犬を飼っているので、犬と海に行ったり自然をみて心の浄化をすることですかね。
チワワのミックス犬なのですが、本当に可愛くて会話できている気がしていますし、癒されます。
カラダファクトリーには定期的に週に1回ほど通っています。普段、腕の負担が多いので、自分より身体を分かってくれて気付かなかったことも気づいてくれて、ケアをしてくれる方がいるのは、気分的にもかなりの安心感があります。
いつもやっているトレーニング内容を話したり、どう思うか聞いてみたり、アドバイスをもらったりしていて助かっています。

夢は、アスリートとして世界のメダリストになること。そして「誰かの1歩踏みだす希望になること」

歩けないことに注目するとネガティブな気持ちになることもありますが、自分は上半身と周囲の人に恵まれてラッキーだと思えています。ありがたい環境を与えていただき感謝しています。
最初は失っていくことばかり見ていたこともありましたが、トレーニングをしていると以前の職場の人が顔を出してくれたり、失って得たものもある。人との縁に感謝です。
これからの夢ですが、ひとつは、アスリートとして世界のメダリストになること。
それからもう一つは、自分が人として目標になること。今の子供たちの世代に、あの車椅子のクライマーみたいになりたいと思ってもらいたいし、誰かが、病気になったとき、自分の存在が一歩踏み出す希望になりたい。小さな一歩を踏み出せるような目標になりたい。そのために頑張って行きたいと思います。

整体師、山本千帆里さん 2013年にFJG 新卒入社し、整体師歴10年目。学生時代は槍投げ選手をしていました。

2013年、大学卒業後に新卒でFJG に入社しました。
中学校ではバトミントン、高校では槍投げで全国大会に出場し、推薦で体育大学に入学しました。
まわりの人、たくさんの方に恵まれ槍投げでは全国6位の結果を残すことが出来ました。競技をしていく中でトレーナーさんと触れ合う機会があり、何かスポーツを志す人たちに対して自分にも出来ることはないかと思ったのがトレーナーを目指したきっかけです。
スポーツトレーナーになる前にラグビー競技の選手となることが決まり、そこからは怪我に悩まされながらも選手として2~3年ほど頑張りました。

平井選手は超人的な筋力とたゆまぬ努力をされていて、さらに謙虚なお人柄。いつも驚かされています。

2023年2月から、平井選手のケアを担当させていただいています。
平井選手は、上半身だけの筋力を使ってクライミング競技をされています。そのためケアの中心は上半身になります。とくに肘、腕、肩など、日々の練習の様子を伺いながらコンディショニングに入らせていただいています。
実は、自分でも少しだけ遊び程度でクライミングをやってみたことがありますが、あれを上半身だけで登るというのは、率直に言って、信じられないくらい凄いことだと思います。
国内の大会でYouTubeでも見られるものがあるので大会は見ているのですが、正直、スーパーマンだと思います。
最初、このようなスーパーアスリートのケアに、自分が入らせていただくと決まった時、自分でいいのかと、平井選手のイメージが超人すぎて、少し怯んでしまっていました。ただ、ご本人にお会いすると、とても謙虚な方で、本当にまじめな努力家で、ひたむきな方で。「いえいえ、もっと努力しないと」といったことをおっしゃる方です。
私自身、平井選手には遠く及びませんが、自分が仕事をしていく中で少し迷っていたことや忘れかけていたことを思い出すきっかけになり、もっと努力したいとか、身体のことももっと勉強しないとと思っていますし、沢山のポジティブな影響を受けました。

普段のケアの中心は、平井選手がトレーニングに集中できるよう、リカバリをメインに。お疲れを残さないようケアしていくことです。

普通のクライミングの競技をされている方は、わりと体操選手に近いというか、全身の筋肉のバランスがわりと均一です。私自身もスポーツ経験があり、体育大学で陸上競技をやっていたこともあり、沢山のスポーツアスリートの身体は見てきたつもりですが、それでも平井選手の上半身の発達は目覚ましいものがあります。パラクライマーの中でも筋力は強い方なのではないでしょうか。
平井選手は、若いころからスポーツに励まれていて、ご病気の発症が20代後半ということもあり、もともと筋力もあったのだと思います。その身体を上半身だけの力で壁面を登っていくわけですから、平井選手ご自身も仰っていましたが、もっと筋力をつけたいとトレーニングにも力が入るのだと思います。
いつも競技中の姿勢は、腕を上げて体重を支え、そのまま耐えて登る、という一点になります。
日常生活と丸で逆のそのアンバランスを、日々ケアしていく必要があります。
私に出来ることは、トレーニングに集中できるよう、リカバリをメインにして疲れが残らないようケアさせていただくこと。そして、ご来店までの間どのようなトレーニングをしてきたか、日常生活でどんなコンディションだったか、しっかりヒアリングすることも大切なことだと思っています。

次の大会に向けてのコンディショニングはしっかりサポートさせていただきたい。

今年、私が平井選手の担当をさせていただいて、初めて迎えた大きな大会。
スイスで8月に行われた選手権で、海外遠征はとても大変だったことと思います。
平井選手は結果に対し、とても悔しがっていらっしゃいました。そんな平井選手を見ていて、私ももっとこんなことが出来たんじゃないかとか、こんなアドバイスが出来たんじゃないかなど考えさせられることがありました。
もっと自分の中にも知識の引き出しや選択肢を増やしていけるように、もっともっと技術を高めて行きたいし勉強したいと思います。
平井選手の次の大会に向けて、私も伴走する気持ちで、精いっぱいサポートさせていただきたいと思います。

パラクライマー 平井亮太選手

27歳の時に難病”副腎白質ジストロフィー”を発症し30歳から車椅子。その後、様々な車椅子スポーツを経験。後にパラクライミングに出会い「自分にはこれしか無い!」と思い、パラクライミングをスタート。
◆戦歴
・2020 パラクライミングジャパンシリーズ第2戦2位
・2021 パラクライミングジャパンシリーズ第1戦3位、第2戦3位
・2022 パラクライミングジャパンシリーズ第1戦3 位、第2戦2位
・IFSC パラクライミング世界選手権大会(L)ベルン(スイス)2023 リザルト(Men AL1) 5位
・2023 パラクライミングジャパンシリーズ第1戦1位
FJGとは2023年2月よりアスリートサポート契約を締結し、店舗における施術サポートを行っています。

山本 千帆里

2013年4月、FJG に新卒入社、カラダファクトリー東戸塚店配属。
その間、約2年間女子ラグビー選手としても活躍。
2021年7月カラダファクトリーイオン大和店に異動、同10月店長昇格(現任)。

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